7月3日に旧優生保護法(平成8年に規定の一部を廃止し母体保護法に変更)の強制優生手術を認めた部分について法の下の平等(憲法14条1項)に反し、違憲であるとの判決を出し、国に対して損害賠償を命じました。
旧優生保護法の規定が対象とした障がい者に対する強度な差別であることは論を待たない事実でしたが、手術から20年の除斥期間を経過(2020年改正前民法では不法行為に基づく損害賠償は行為時から20年経過すると損害賠償請求権が消滅すると民法に規定されていたため従前の最高裁は20年経過を理由に強制優生手術を施された方の損害賠償請求を認めてきませんでした)しても、損害賠償請求が認められるかが争いになりましたが、国側が除斥期間の経過を主張することは信義則に反すると明示しました。
旧優生保護法が違憲であるという指摘は私が大学生だった2000年代後半には存在しました(当時憲法の授業で違憲が疑われるケースとして非嫡出子の法定相続分の差別などと一緒に取り上げられていました)ので、ようやく最高裁判決が出たか、という感想です。優生手術を受けた方は合計2万5000人に上るそうですが、もし対象となる方は今後国による支払いについての法律が制定されると思います(今までは320万円の一時金を支払うという法律があるのみで、それも申請された方は1100人程度だったと聞きます)ので、報道を中止されるよう勧めます。私も注視していきたいと思います。
日本の最高裁は法令違憲判決を出すことにとても慎重な(立法に介入することを避ける)傾向にあり、私が学生の頃は日本では法令違憲判決が7件しか出ていないと習いました。今はこれで13件目となり、昨年の性同一性障害特例法の生殖不能手術規定についての違憲判決に引き続き、2年連続で違憲判決が出たことになります。
個人的には最高裁が違憲判決を出すことには賛成です。明らかに人権に反する法律が存在するのに、憲法の最後の番人たる最高裁が何も言わないというのは間違っていると思うからです。
思えば大学生のころは違憲判決を出してみたいという動機で裁判官になりたいと思っていました笑 結局、弁護士になりましたが、今回のような違憲判決が出たのも長年尽力をしてきた弁護士の方々がいるからです。私も誤った法令により人権を侵害されてきた人からの相談を受けた際は、「法律で決まっているから」という杓子定規な回答をせずに本当に法律が正しいのか、という観点を忘れないように心がけたいと思います。