任意整理による企業の債務整理
特別清算手続きや破産手続きなど裁判所が関与する法的清算手続きを取らず、会社自らが各債権者との個別の話し合いや債権者全体との集団的な話し合いにより、弁済額や弁済方法等を了承してもらって債務整理を行い、会社や事業を清算する方法を任意整理といいます。
各債権者に弁済額や弁済方法等を了承してもらえたら、会社に残っている全ての財産の売却や回収を行い、集まった資金で各債権者に公平に弁済します。
債権額に比例させて支払うのが通常ですが、大口債権と少額債権では異なる取扱いをし、少額債権の返済率を高くすることもあります。
任意整理が可能な状況とは?
任意整理で会社を清算するには、次のような条件を満たしている必要があります。
- 債権者が極めて少数
- 債権者が清算する会社に協力的
- 経営者が公平に債務整理を行うという強い意思を持っていること
- 一般の債権に優先する税金や社会保険料、労働債権が全額支払えること
- 任意整理による処理では、債権放棄額を損金算入できない可能性があることを債権者が了承していること
任意整理は、破産管財人が清算手続きを進める破産と異なり、会社自身が清算手続きを行ない、会社が提案する債務整理の内容に債権者全員の同意を得る必要があります。
しかし、債権者が多いと、どうしても、全員の賛成が得られない可能性が高くなります。
また、倒産手続きでは倒産会社に敵対的になる債権者も少なくないことから、会社の経営者自ら債権者を説得して債務整理案に同意してもらうことは非常に厳しいと言えます。
そのため、任意整理で債務整理ができるケースはかなり限られてきます。
任意整理によるメリット・デメリット
- メリット
- デメリット
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会社側: 債権者に債務免除(債務カット)してもらう額は、税務処理上、債務免除益として利益に計上されるが、任意整理では、期限切れの繰越欠損金や資産の評価損が利用できないため、ケースによっては莫大な課税が発生(ただし、特定調停を使った任意整理では期限切れ繰越欠損金の利用が可能)。その結果、一般債権者に弁済できない事態に陥る可能性がある。
破産手続きでは債務免除を受ける必要がないため、このような問題は生じない。
債権者側:破産や特別清算では回収不能額や債務免除額を確実に損金算入できるが、任意整理では債権放棄額を貸し倒れとして損金算入できない可能性がある。