2022年5月に成立した改正民事訴訟法が今年の4月1日から施行となります。
主な改正点としては
①民事訴訟のIT化
訴訟に提出する書面をオンライン上で提出できるようになります。すでに一部の裁判所ではオンライン提出が実施されており、今年に入ってから名古屋地方裁判所の事件ではオンライン提出を行っております。裁判所の判決もウェブで送達されるようになり、事件記録もウェブで閲覧できるようになる予定です。
また、ウェブ会議の方法により裁判所に出廷することが認められます(すでに大部分がウェブ会議で行われておりますが、今後は口頭弁論までウェブ会議で参加できるようになる予定なので、1回も裁判所に行かずに訴訟が出来るかもしれません)。
家事手続も同様にウェブ会議利用が認められるようになるので、離婚調停もウェブ会議で行えるようになる予定です。
②審理の短縮
「法定審理期間訴訟手続」という制度が新設されます。これは一定の類型の事件を除く事件について、双方が承諾した場合、初回の期日から6か月以内に審理終結することとするという制度です。比較的争いのない事件での活用が期待されます。
③秘匿制度の新設
相手方に対して住所氏名を知られると、社会生活を営むのに著しい支障を生じるおそれがあると言える場合(例えばDV事案や報復措置があり得る事案)に、住所氏名を隠して訴訟が出来るようになります。相手に住所を知られたくないから訴えられない、という声を耳にすることがありましたが、今後はこの制度を活用していくといいでしょう。
特に①は弁護士にとっても大きな影響を与えます。遠隔地の裁判所の事件でも受任できる可能性が高まり、裁判所に出廷する回数が減ることで移動時間を節約でき、紙を印刷していちいち証拠番号を振るといった手間を省けるというのは大きなメリットです。
他方、何でもオンラインでやっていいのかというのは個人的に疑問です。古い考えかもしれませんが、裁判所や相手方の顔を見たほうが事件の話をしやすいですし、証人尋問などは本人の口調、表情などで心証が変わるものですから法廷でやるべきだと思っています。
うまくオンラインのメリットを享受しながらも、従来の法曹が大切にしてきたマインドを失わないようにしていきたいですね。